ふるさと納税100億円キャンペーンが生む影響と地場産品の定義について
ついに、泉佐野市が最後っ屁
泉佐野市がふるさと納税で2,3月で寄付をしてくれた方限定で、寄附額の10%または20%(条件による)相当のアマゾンギフト券を贈るとともに、謝礼品まで付いてくるというキャンペーンを開始した。
これは、もう来年度はふるさと納税制度対象外になること前提のキャンペーンといっていいだろう。
自治体が国に喧嘩を売る形になっており、法整備の穴を上手くついた事例になるが、ここまでやるかというくらいで、逆に心配になってくる。(ふるさと納税は集まったが、地方交付税交付金で嫌がらせされないだろうか・・・)
とはいえ、自治体を仮に企業だと仮定すると成功と言えるだろう。
ふるさと納税はあくまでお金を集める手段と割り切った故に、実際、泉佐野市はプールの整備が出来、子供たちのために利用されている。あくまで泉佐野市からすると、お客様は地元住民なのだ。
泉佐野市の集めた寄附は去年度135億円。この数字は、圧倒的で、他の自治体は1億円~2億円程度が平均と考えると、最低これだけ集めるのには65年~135年かかってしまうことになる。それまで、この制度が続くとは限らない。
これ以降、国に抵抗したことでの余波がなければ、間違いなく功績としては非常に大きいといえるだろう。
通販業界の中でのマーケットごとの売上1位の総取りは、ふるさと納税でも完全に当てはまっている。この原理をそのままスピーディーにやりきった自治体だったとも言えよう。
100億円キャンペーンがもたらす影響
条件により寄附額の10%か20%が還元されるというもの。
仮に100億円全てがキャンペーンとして利用されてしまった場合、逆算して泉佐野市は最大1,000億円をこの2か月間(2019年2月~3月)で集めることになる。
去年度のふるさと納税寄附額の総額が3,600億円だから、去年の全国の寄附額の約27%を泉佐野市が全て持って行く事になる。ふるさと納税の総額の伸び率についてはここ2,3年で鈍化していることを考えると、他の自治体は残り70%程度を今から12月までに奪い合うことになってしまう。既に2019年度のふるさと納税のスタートラインは2018年とは全く違ってきている状況になるのだ。
他の自治体はどうすべきか?
ここ最近は、キレイごとばかり言ってられないということで競合は激化している。ただし、泉佐野市のようにここまで突っ込めないというジレンマを抱えながら対応をしているのが実情だ。ふるさと納税担当者の意見と首長の意見の違いもジレンマを生むこともある。しかしながら、与えられた条件の範囲内で、知恵を振り絞って手を動かしていくしかないのだ。
近隣自治体と数字がでるぶん寄附額で比較されがちだが、隣町は条件も違うのだから意味がない。
国に喧嘩を売るレベルで行くか?
国とうまい具合の距離感を保ちながら差し込んでいくか?
制度の生まれた理由の通り、信念を貫いてやっていくか?
この方針は自治体内では意識共有しておく方がいいだろう。
一方、裏では地場産品の定義が決まる
泉佐野市のキャンペーンが話題に出過ぎて、こちらが霞んでしまったが2019年6月に予定されている制度改正にむけて、地場産品の定義がようやく決まってきそうな状況だ。
菅官房長官の会見でのコメントを要約すると、こうだ。
地場産品が少ない自治体の事を考慮し、同県産品までOKとするとの方針で進んでいる。
ただ、同県産品をすでに取り扱っている自治体は多い。今回は発言のみだったので深い話が出来ないが、ジャンルごとに加工、製造、販売などどこを線引きとして同県産品とみなすのか否かの議論まで行われ、書面として落とし込まれるか否かが今後の鍵となってくるのは間違いないだろう。
県内全域OKとなった場合の各自治体への影響
自治体の方針毎に場合を分けて紹介する。
既に同県産品まで取り扱っている自治体・・・他の自治体も同県産品を用意してくるため、脅威となる。アイテム数を増やしていくなどの対抗策を取らないと寄附額は減る可能性が高い。
新しく同県産品まで取り扱う自治体・・・寄附額は上がる。一方で、本当の地場産品の価値が霞んでしまう可能性が高い。地場産品の発注のみが減る可能性がある。
今後も同県産品は取り扱わない自治体・・・豊富に自治体内産品がある場合は、ブランディングをうまくやれば差別化が図れるため寄附が伸びる可能性がある。
今まさに次年度の計画を練っている自治体は多いが、泉佐野市に先を越されてしまった感は否めない担当者も多いのではないだろうか。自治体担当者は他の自治体の情報に常にアンテナを高くしつつ行動していけば、おのずと寄附額もブランディングもできていくと信じて取り組んでいくしかない。