1.ミース・ファン・デル・ローエの残した“Less is More”
世界三大建築家(ル・コルビジェ、フランク・ロイド・ライト、そしてミース・ファン・デル・ローエ)の一人であるミース・ファン・デル・ローエはこの言葉を残しています。
“Less is More”
日本語で表現すると、少ないことは豊かであるという意味です。
ミース・ファン・デル・ローエの作品は機能性を追求し装飾というものを著しく排除した建築設計で有名です。
特に、ファンズワース邸@アメリカ:シカゴ郊外や世界遺産にもなっているトゥーゲントハット邸@チェコ:ブルノがそれにあたります。
このモノ(壁、梁、窓など)は本当にいるのか?ということを考えた末、トゥーゲントハット邸では、食堂やサロン、書斎などの間仕切りが無く、緩やかにつながっています。
ただ、予算が無くて壁が無いというわけではなく、もう一つの格言
” God is in the detail” (神は細部に宿る)
という言葉の通り材質や工法に関してはこだわりを見せています。
2.現代の3つの余白
一方、現代では、アメリカで大人気となっている近藤麻理恵さんの「片付け」が人気です。
飽食の時代、何でも買える時代の中でいかに、何を選び、何を削ぐかが問われています。
1年間で部屋の中で使われなかったものは、一生と言っていいほど利用されない事でしょう。
建築においてオープンスペースが増えてきているのも、機能の余白と共に、心の余白を作ることが大事であるということを伝えています。
余白というものは、空間・精神・時間の3つで生み出すことが出来ます。どれも余白が無いと、中々つらい生活になると思います。
空間に余白が無い・・・活動に制限が生まれる
精神に余白が無い・・・新しい情報を受け入れることが難しくなる
時間に余白が無い・・・常に動き続けている状態で、考えを練る時間が無くなる
また、建物の中での余白の美しさというのは余白がある時しか感じることが出来ません。
何かを入れ込んでしまったら、元に戻すことはなかなか難しいです。都市のオープンスペースを作るという事でもわかると思いますが、都市に公園が全くなかったらビル群や住宅がひしめき合う余白のない街になってしまい、眺望は失われてしまう事でしょう。
Less is Moreの言葉の通り、無い事で新しく生まれるものが確かにあるのです。
3.余白が生まれたときの幸福感に気づく
話は飛びますが、椎名林檎さんの「ありあまる富」という曲でも同じことが歌われていると思います。
何もかも、持っている人たちに対しての妬みなどからくる感情は、違っており、失ったり、無かった方が富が溢れているという歌詞で最後をくくっています。
失ってはいけないものは間違いなくありますが、Less is Moreの考え方で、増やすよりも減らす事で受けられる幸福感に気づく事が今現在には合っているかもしれません。