今のふるさと納税制度で寄附額が多く集まる自治体の条件

令和元年6月から、総務省のふるさと納税制度の改定により、かなりの自治体が返礼品(謝礼品)に対して、これは大丈夫なのか?これはいいのか?などの疑問を持ちつつ、運営を行っている。現在の条件の中で、多く寄附が集まる自治体は下記の要素を持つ自治体だ。

 

①ビール工場がある

②高額返礼品(10万以上)のものがある

 

このどちらかを保有していれば自然と寄附は多く集まる仕組みになっている。

 

ふるさと納税での主力返礼品といえば、間違いなく肉、米の2強だ。しかし、この2つのカテゴリは残念ながら返礼品の調達がどの自治体でも容易にできてしまう傾向があり差別化が出来ない。

 

 

 

1.なぜ、ビール工場を持っていると寄附が集まるのか?

 

一方で、ビール工場を上げたのは、総務省が掲げた地場産品基準の中の、

 

三 当該地方団体の区域内において返礼品等の製造、加工その他の工程のうち主要な部分を行うことにより相応の付加価値が生じているものであること。

 

この条件に他ならない。ビールというのは、水、デンプン源(麦芽など)、ビール酵母、香味料(ホップなど)が原材料として利用されるが、これらは、生産を重視するのであれば、

 

二 当該地方団体の区域内において返礼品等の原材料の主要な部分が生産されたものであること

 

という条件をクリアしなければならない。ではビールにおいて“主要な部分”とは何なのか?そういった議論になる。この議論は、進めていくにつれ大抵棚上げされ、結局、ビールの原材料が生産されている自治体はビールを出すことが難しい。

 

そのため、返礼品等の製造、加工その他の工程のうち主要な部分=ビール工場を持つ自治体がハッキリ言って強い。ビールというのはし好品であり、肉、米の選択肢には劣るものの根強いファンがいる。そしてストックしても邪魔にならない。ビール工場がある拠点は、他の飲料やお酒も造っている可能性が高く、相乗効果で寄附が集まっていく。

 

大手ブランドのビール工場には勝てないのだ。

 

 

 

2.高額返礼品は分かりやすい

 

次に、高額返礼品だ。

 

高額返礼品というと、家具、寝具、絨毯、ハイブランドのワインなどが相当する。各自治体によって判断は分かれるようだが、資産性が高い(=返礼品価格を50万として上限にする)ところも多い。この中で、家具、寝具、絨毯、ハイブランドのワインなども、加工している自治体はかなり限定される。さらに、各返礼品がブランドが確立している場合は、強いことになる。

 

日本3大家具産地

大手寝具メーカー拠点

有名ワイナリー

 

などだ。

 

3.高額返礼品といえば観光も当てはまるが、一部の自治体に優遇されている条件

<総務省:資料参照

 

ここで、高額返礼品に観光という要素もあてはまる。観光は総務省の条件として、

 

七 当該地方団体の区域内において提供される役務その他これに準ずるものであって、当該役務の主要な部分が当該地方団体に相当程度関連性のあるものであること。

 

これをクリアしなければならない。要は、観光・サービスはオッケーだけど、自治体内で任務が遂行できるようにしなさいという事だ。そして観光の中で切っても切れない要素になっている“交通費”。交通費自体は、自治体内のサービスではないとすると、自治体内でのサービスやコンテンツの価格をかなり上げる必要がある。仮に主要な部分=価格として50%以上を自治体でサービスしなければならないと考えると、

 

九州に来る場合、東京の人が寄付したとして、

 

東京~九州往復4万円と仮定すると、自治体内で4万円以上消費させる必要がある。宿泊が無いと間違いなく厳しく、それなりに寄附額も高くなってくる。そして、もはや宿泊施設を持たない自治体にとっては、交通費は寄附者の自腹で、地元のお食事券等しか出せなくなってしまう。

 

結論を言うと、令和最初の寄附額を沢山集めるところは

 

加工品などの工場を保有する自治体(特にビール)

高額返礼品を用意できる自治体

 

この2つだ。生産地に対して曖昧な判断となってしまったことが、加工現場重視の条件を生んでしまい、今でもいびつな制度条件は残ってしまっている。

 

果たして、来年度は返礼品の条件改定はあるのだろうか。自治体担当者及び首長は、そこを一番気にしているはずだ。